Wi-Fiルーターの選び方は、規格の新しさを比べる前に「買い替えで直る不調かどうか」を切り分けるのが近道です。マンションのVDSLや契約側のIPv6未対応が原因なら、どれを買っても速くなりません。決め手は間取り・同時接続台数・上りの用途の3つ。6GHz帯は2022年9月の省令施行で使えるようになりました。
この記事でわかること
- 買い替えで直る不調と直らない不調の切り分け方
- Wi-Fi 4/5/6/6E/7 の世代で実際に変わること(速度より同時接続)
- IPv6(IPoE)は契約側とルーター側の両方が揃って初めて効くという事実
- 畳数表記でなく間取り・同時接続台数・上りの用途で決める手順
- 買う前に確認する二重ルーター・有線ポート・設置場所の3点
- 買い替え目安を年数でなく観測できる兆候で判断する方法
参考: Wi-Fi Alliance「Wi-Fi (MAC/PHY)」(参照)/総務省「令和6年版 情報通信白書」無線LANの高速化(参照)/電子情報技術産業協会(JEITA)「5GHz帯および6GHz帯無線LANに関するガイドライン 第二版」2024年3月(参照)
スペック表を開く前に決めること
Wi-Fiルーターを探し始めると、まず目に入るのは規格名と最大速度の数字です。ただ、その数字を比べる作業は、選び方の順番としては後半にあたります。
先に決めるべきは「いま起きている不調が、ルーターを替えて直る種類のものか」。ここを飛ばすと、1万円以上を払っても体感が何も変わらない、という結果になりがちです。
原因が回線側にある不調は、家の中の機器では解決できません。逆に、無線の届き方や台数の処理が原因なら、買い替えは素直に効きます。
この記事の要点
- まず「有線でも遅いか」「配線方式は何か」「契約はIPv6か」を確認する
- 規格の世代で伸びるのは最高速度より同時接続をさばく力
- IPv6(IPoE)は契約とルーターの両方が対応していないと効かない
- 選定の軸は間取り・同時接続台数・上りの用途の3つ
- 買い替え目安は年数でなく観測できる兆候で決める
なお、コンセントに挿すだけで使う「ホームルーター」は、回線契約が本体に含まれる別商品です。工事不要の据え置き型を探しているなら、ホームルーターおすすめ比較のほうが目的に合います。本記事が扱うのは、光回線などにつないで家の中にWi-Fiを飛ばす無線LANルーターです。
Wi-Fiルーターの選び方は「買い替えで直るか」の切り分けから始まる
結論から言えば、買い替えで確実に効くのは「無線だけが遅い」ときだけです。有線でも遅い、配線方式が構造的に不利、契約がIPv6に対応していない——このどれかに当てはまるなら、機器を替えても数字はほとんど動きません。
順番を間違えると、原因を残したまま出費だけが増えます。次の4つの問いに、上から順に答えてみてください。
買い替えで直る不調か、直らない不調かの切り分け
- 買う前に、その遅さがルーターのせいかどうかを確かめます
- 1LANケーブルで直結しても遅いか有線でも遅いなら原因は回線側かルーター本体。無線の性能を上げても体感は変わらない
- 2マンションの配線方式はVDSLか電話線を使うVDSLは規格上の上限が低い。建物側の方式はルーターでは超えられない
- 3契約はIPv6(IPoE)になっているかIPv4のPPPoEのままなら、夜だけ遅い症状は機器を替えても残る
- 4特定の部屋・無線のときだけ遅いかここで初めてWi-Fiルーターの出番。電波の届き方と処理台数の問題
1〜3のどれかに当てはまるなら、買い物より先に契約と住まいの側を確認する。
図:買い替えが効くのは4番だけ。1〜3は回線・建物・契約の問題で、機器では解決できない。
買い替えても変わらない代表的な3ケース
1つめはマンションのVDSL方式です。建物内を電話線で配る方式のため、各戸に届く速度の上限がそもそも低く設定されています。自分の建物がどの方式かはマンション光回線の配線方式を確認する方法で確かめられます。
2つめは回線側の混雑。毎日決まった時間帯だけ遅くなるパターンがこれにあたります。原因は自宅の外側にあるため、家の中の機器を替えても改善しません。
3つめが契約側のIPv6未対応です。プランがIPv4のPPPoE接続のままなら、対応ルーターだけ用意しても接続方式は変わりません。これについては後の章で詳しく扱います。
買い替えが効くのはこんなとき
反対に、次のような症状はルーターの守備範囲です。有線では十分な速度が出ているのに、無線にした途端に落ちる。リビングでは問題ないのに、寝室や2階だけ電波が弱い。家族が同時に使う夜だけ、動画が止まりやすくなる。
いずれも原因は電波の届き方と、同時接続の処理能力。ここが効いているなら、世代の新しい機種に替えると体感が変わります。
切り分けの手順そのものは光回線が遅い・繋がりにくいときの改善方法にまとめてあります。
そもそも接続できないなら、先にWiFiが繋がらない原因と対処法を。症状が違えば見る場所も変わります。
ホームルーターと混同しない
売り場では隣に並んでいますが、Wi-Fiルーターとホームルーターは中身がまったく違う機器です。回線契約が別に必要か、本体に含まれるか——ここが決定的な差になります。
Wi-Fiルーターとホームルーターの違い
- 役割
- 有線で来ている回線を、家の中のWi-Fiに変える
- 回線契約
- 光回線などの契約が別に必要
- 買うもの
- 機器本体だけ(家電量販店・通販で購入)
- 選ぶ軸
- 規格の世代・間取り・同時接続台数・IPv6の方式対応
- この記事の対象
- こちら
- 役割
- 携帯電話の電波を受け取り、家の中のWi-Fiに変える
- 回線契約
- 本体の契約に回線が含まれる
- 買うもの
- 回線プランとセット(事業者と契約する)
- 選ぶ軸
- 住所の対応エリア・月額料金・データ量の条件
- 工事
- 不要。コンセントに挿して使う
図:名前は似ているが、回線契約が別か込みかが決定的に違う。比べる軸そのものが別になる。
すでに光回線を使っていて電波の届き方に不満がある、というケースならWi-Fiルーターの話です。回線契約そのものをこれから決めるなら、選択肢はホームルーターまで広がります。
Wi-Fi規格の世代で本当に変わるのは「同時にさばく力」
規格の世代が上がって伸びるのは、カタログ上の最高速度よりも、多数の端末を同時にさばく効率です。1台だけつないで測る速度は、世代を上げてもそこまで変わりません。
Wi-Fi Alliance によれば、Wi-Fi 6(IEEE 802.11ax)の導入は2018年。備わったのは OFDMA・マルチユーザーMIMO・TWT(Target Wake Time)といった機能です。
いずれも「多くの端末が少しずつ通信する状況」を効率化する仕組みになります。
Wi-Fi 7 の導入は2024年です(出典: Wi-Fi Alliance)。6GHz帯での320MHz幅・マルチリンク動作・4K QAM に対応しました。
Wi-Fi規格の世代別にできること
- 世代が上がって増えるのは「最高速度」より「同時にさばく力」
- Wi-Fi 4(IEEE 802.11n)2.4GHz帯が中心。5GHz帯に対応しない機種もあり、電子レンジ等との干渉を受けやすい
- Wi-Fi 5(IEEE 802.11ac)5GHz帯に対応。1〜2台を速く使うだけなら、いまでも不足しにくい
- Wi-Fi 6(IEEE 802.11ax・2018年導入)OFDMA・MU-MIMO・TWTで多数の端末を効率よく処理。台数が多い家で効く
- Wi-Fi 6EWi-Fi 6を6GHz帯へ拡張したもの。日本では2022年9月の省令施行で6GHz帯が利用可能に
- Wi-Fi 7(2024年導入)6GHz帯の320MHz幅・マルチリンク動作・4K QAM。恩恵を受けるには端末側の対応も要る
図:規格が新しいほど効くのは「端末の多い家」。1台で使うだけなら差は出にくい(出典: Wi-Fi Alliance/JEITA ガイドライン第二版)。
Wi-Fi 6は必要か——判断は台数で決まる
「Wi-Fi 6は必要か」という問いへの答えは、家の中の端末数で変わります。接続機器が10台を超えるあたりから、世代差が体感に出やすくなるというのが目安です。
スマホ2台とノートPC1台という構成なら、Wi-Fi 5 でも困る場面は多くありません。一方で、テレビ・ゲーム機・スマートスピーカー・見守りカメラ・ロボット掃除機まで足すと、台数は一気に増えます。
Wi-Fi 6 の OFDMA は、複数の端末への通信を細かく割り当てて同時に送る仕組みです。順番待ちが減るため、家族が同時に使う時間帯で差が出ます。
6GHz帯(Wi-Fi 6E/7)が使えるようになった経緯
日本で6GHz帯が無線LANに開放されたのは、比較的最近のことです。6GHz帯(5925〜6425MHz)を無線LANに割り当てる総務省令の施行は2022年9月。
出典は JEITA「5GHz帯および6GHz帯無線LANに関するガイドライン 第二版」(2024年3月29日)です。
総務省「令和6年版 情報通信白書」でも、2022年に2.4GHz帯・5GHz帯に加えて6GHz帯を利用可能とする省令改正が行われた、と整理されています。
6GHz帯は他の機器と混み合っていないぶん、干渉を受けにくいのが利点です。ただし周波数が高いほど障害物に弱いため、壁を隔てた部屋まで届きやすいわけではありません。
5GHz帯にはチャネルごとの制約がある
5GHz帯は3つのグループに分かれます。JEITA の同ガイドライン(2024年3月)によれば、W52 は36/40/44/48ch。W53 は52/56/60/64ch、W56 は100〜144ch です。
このうちW56 の追加チャネルは屋内だけでなく屋外でも使用可能とされています。またW53・W56 のチャネルでは「DFS」「TPC」という電波の制御機能が使われます。
DFS はレーダー波を検出したときにチャネルを移す仕組みです。近くに気象レーダー等があると、通信が一時的に途切れることがあります。原因不明の切断が続くなら、チャネル設定を見直す価値があります。
周波数帯ごとの性格(2026年8月時点の整理)
| 周波数帯 | 届きやすさ | 干渉の受けやすさ | 向いている使い方 |
|---|---|---|---|
| 2.4GHz帯 | 壁を回り込みやすい | 電子レンジ等と干渉しやすい | 離れた部屋・IoT機器 |
| 5GHz帯 | 2.4GHzより届きにくい | 比較的少ない(DFSの影響あり) | 同じ部屋・近い距離での高速通信 |
| 6GHz帯 | 5GHzよりさらに届きにくい | 現状は混みにくい | 同室での多台数・大容量通信 |
端末側が対応していなければ世代の恩恵は出ない
見落とされやすいのが端末側です。Wi-Fi 6 の効率化機能は、親機と子機の両方が対応して初めて働きます。手持ちのスマホやPCが Wi-Fi 5 世代なら、Wi-Fi 7 のルーターを買っても、その端末は Wi-Fi 5 として接続します。
とはいえ、対応端末が1台でもあるなら無駄にはなりません。将来の買い替えを見込むなら、少し上の世代を選んでおく判断も合理的です。
IPv6(IPoE)は契約側とルーター側の両方が揃って初めて効く
ここが選び方でいちばん誤解の多いところです。「IPv6対応」と書かれたルーターを買っても、契約プラン側がIPoEに対応していなければ何も変わりません。逆もまた同じで、契約だけ切り替えても非対応ルーターでは使えません。
従来のIPv4(PPPoE)方式は、混雑する時間帯に速度が落ちやすい構造を持ちます。IPv6(IPoE)方式は混雑ポイントを通りにくく、夜間の落ち込みに効きやすい方式です。
「IPv6対応」の表記には2つの意味がある
製品説明の「IPv6対応」には、実は段階があります。
- IPv6パススルー(ブリッジ)のみ:IPv6の通信を素通しするだけ。IPv4 over IPv6 の変換はしない
- IPv4 over IPv6 に対応:IPv6の通り道でIPv4サイトも見られるようにする。ここまで対応して初めて恩恵が出る
多くのWebサイトは今もIPv4で提供されています。そのため、IPv6の速い通り道を使いながらIPv4サイトを見るには、IPv4 over IPv6 の変換が欠かせません。1番目だけの対応だと、体感はほとんど変わらないわけです。
方式が合っていないと使えない
さらに厄介なのが方式の違いです。IPv4 over IPv6 には複数の方式があり、代表的なものに MAP-E 系(v6プラス等)と DS-Lite 系(transix等)があります。
契約しているプロバイダが使う方式に、ルーターが対応している必要があります。「IPv4 over IPv6対応」とだけ書かれていても、片方の方式にしか対応しない製品は珍しくありません。
購入前の確認手順はシンプルです。契約中のプロバイダのサポートページで方式名を調べ、その方式名が製品の仕様欄にあるかを見る。この2ステップで判断できます。
すでにIPoEなら、ルーターを替えても方式は変わらない
逆のパターンも押さえておきましょう。すでにIPoEで接続できている家庭が新しいルーターに替えても、接続方式そのものは変わりません。変わるのは無線の性能と処理台数だけです。
応答速度の安定を狙うなら、切り分けと設定の順番が効いてきます。詳しくはping値・ジッターの目安と下げ方で整理しました。
必要なスペックは「間取り・同時接続台数・上りの用途」で決める
パッケージの畳数表記から選ぶと、過不足が出やすくなります。代わりに使うのが、間取り・同時接続台数・上りの用途という3つの軸です。
この3つを先に書き出してから仕様欄を見ると、比較すべき項目が一気に絞れます。
間取り・台数・上りの用途から必要スペックを決める
- 畳数表記からでなく、自宅の3条件から必要な機能を決める
- 間取り:ワンルーム〜1LDK1台で足りることが多い。設置場所を部屋の中央・高い位置にできるかを優先
- 間取り:2階建て・3LDK以上・鉄筋の間仕切りが多い1台で全室は届きにくい。中継機かメッシュ構成を前提に台数から考える
- 同時接続台数:〜10台Wi-Fi 5でも不足しにくい。スマホ・PC以外の機器も必ず数に入れる
- 同時接続台数:10台超Wi-Fi 6以降のOFDMA・MU-MIMOが効く。夜の混み合いで差が出る
- 上りの用途があるWeb会議・ライブ配信・クラウドバックアップが日常なら、上り方向の安定を重視
- 有線でも使うゲーム機やデスクトップを有線にするなら、LANポートの上限速度を仕様欄で確認
図:畳数でなく「間取り・台数・上りの用途」で決めると、過不足のない1台にたどり着く。
畳数表記を鵜呑みにしない理由
「〜○畳」「3LDK対応」といった表記は、各メーカーが自社の測定条件で示した目安です。統一された測定規格に基づく数値ではないため、メーカーが違えば同じ畳数でも中身が違います。
電波の届き方は建物側の条件で大きく変わります。鉄筋コンクリートの壁、金属製のドア、水回りの配置——どれも減衰の要因です。同じ「3LDK対応」でも、木造と鉄筋では結果が別物になります。
畳数表記は「だいたいこのクラス」という目安として使い、実際の判断は間取りと設置場所で行うほうが外しません。
同時接続台数はスマホとPCだけで数えない
台数を数えるとき、スマホとPCしか数えないケースをよく見かけます。実際には、次のような機器がすべてWi-Fiにつながっています。
- テレビ・レコーダー・ストリーミング端末
- ゲーム機(据え置き・携帯型)
- スマートスピーカー・スマートリモコン
- 見守りカメラ・スマートロック・ロボット掃除機
- プリンター・体重計・スマート照明
3人家族でも、数えると15台前後になることは珍しくありません。IoT機器は通信量こそ小さいものの、接続の数としては1台ぶんを占めます。ここが Wi-Fi 6 以降の効きどころです。
上りの用途があるかを確認する
見落とされがちなのが上り方向です。動画を観るだけなら下りが中心ですが、次の使い方は上りを継続的に使います。
- 在宅勤務のWeb会議(カメラ映像・画面共有を常時送信)
- ライブ配信・オンライン授業の配信側
- 写真や動画のクラウドバックアップ
- 大きいファイルの送信が多い業務
上りの用途があるなら、無線区間の安定性がそのまま会議の品質に出ます。Web会議が業務の中心なら、規格の世代より先に有線接続を検討するほうが確実です。
1台で届かないときの選択肢
部屋数が多い、あるいは2階建てで電波が届かない場合、上位機種1台に買い替えても解決しないことがあります。電波の強さは法令で上限が決まっているため、1台あたりの飛距離には限界があるからです。
この場合の選択肢は、中継機の追加かメッシュWi-Fi構成になります。メッシュは複数台を1つのネットワークとして扱い、端末が自動的に電波の良い機器へつなぎ替える仕組みです。距離の問題は、性能を上げるより台数を増やすほうが素直に効きます。
買う前に確認する3点(二重ルーター・有線ポート・設置場所)
購入ボタンを押す前に確認したい項目が3つあります。どれも後から気づくと、買い直しか設定変更が必要になる箇所です。
HGWにルーター機能があると二重ルーターになる
ひかり電話を契約していると、事業者からホームゲートウェイ(HGW)が貸与されていることがあります。これはONUにルーター機能が組み込まれた機器。すでにルーターとして動いている状態です。
ここに市販ルーターをそのままルーターモードでつなぐと、ルーターが2台直列に並びます。いわゆる「二重ルーター」です。
アドレス変換が2回走るため、通信が不安定になったり、ポート開放が使えなくなったりします。
確認方法はシンプルです。手元の機器に電話線を挿す差し込み口があるか、本体に「ひかり電話」や「PPP」のランプがあるかを見てください。あればルーター機能を持っています。
該当する場合は、市販ルーターをブリッジモード(アクセスポイントモード)に切り替えて使います。多くの製品は本体背面のスイッチで切り替えられるため、購入前に「ブリッジモード対応」を仕様欄で確認しておくと安心です。
有線ポートの上限速度を仕様欄で見る
無線の規格ばかり見ていると、有線側の上限を見落とします。LANポートが100Mbps止まりの機種では、1Gbpsの回線でも有線が頭打ちになります。
仕様欄の表記は「10/100BASE-TX」なら100Mbps上限、「10/100/1000BASE-T」なら1Gbps対応です。10ギガの回線を契約しているなら、2.5Gbps以上に対応したポートがあるかまで確認してください。
ゲーム機やデスクトップPCを有線でつなぐ予定があるなら、この項目は無線の規格よりも先に見る価値があります。
置ける場所がなければスペックは活きない
最後は設置場所です。仕様がどれだけ良くても、電波が遮られる場所に置けば性能は出ません。
設置場所ごとの電波の届き方
| 置き方 | 電波の届き方 | 理由 |
|---|---|---|
| 部屋の中央・床から1〜2mの高さ | 良い | 全方向に広がりやすい |
| 壁際・部屋の隅 | やや悪い | 片側の電波が壁に吸われる |
| 床に直置き | 悪い | 下方向の電波が無駄になる |
| 金属ラックの中・テレビの裏 | 悪い | 金属が電波を反射・遮蔽する |
| 水槽・電子レンジの近く | 悪い | 水と電磁波が2.4GHz帯に干渉する |
回線が引き込まれている場所と、電波を飛ばしたい場所が離れている家は少なくありません。LANケーブルを延ばして親機を移すか、メッシュ構成にするかを買う前に決めておくと、設置で迷わずに済みます。
買い替え目安は年数でなく「観測できる兆候」で決める
「何年で買い替えるべきか」という問いには、年数より観測できる兆候で判断するほうが実用的です。同じ5年でも、台数の増え方や契約の変更で状況はまったく違います。
次のうち2つ以上に当てはまるなら、買い替えを検討する段階といえます。
買い替えを検討する兆候
| 兆候 | 確認方法 | なぜ買い替えの理由になるか |
|---|---|---|
| 5GHz帯が使えない | 接続できるSSIDが2.4GHz帯だけ | Wi-Fi 4以前の世代。干渉を避けられない |
| LANポートが100Mbps上限 | 仕様欄が「10/100BASE-TX」 | 回線の速度を有線で活かせない |
| 契約のIPv6方式に非対応 | プロバイダの方式名と仕様欄を照合 | 夜間の混雑を回避できないままになる |
| 週に1回以上の再起動が必要 | 再起動の頻度を記録 | 処理能力か経年劣化が限界に近い |
| 台数が増えて夜だけ不安定 | 接続機器を数える | 同時接続の処理が追いついていない |
| 本体が熱く、動作が不安定 | 触って確認 | 熱による性能低下・故障の予兆 |
| セキュリティ更新が終了 | メーカーのサポート情報 | 脆弱性が修正されない状態が続く |
特に優先度が高いのはセキュリティ更新の終了
速度の不満より優先すべきなのが、メーカーのサポート(ファームウェア更新)が終了しているケースです。ルーターは家庭内のすべての通信が通る機器。脆弱性が放置された状態は、速度の問題より重く扱う価値があります。
メーカーの製品ページには、サポート状況やファームウェアの最終更新日が載っています。型番で検索して更新が長期間止まっているなら、性能に不満がなくても買い替えの理由になるでしょう。
逆に、買い替えを急がなくてよいケース
一方で、次の場合は急ぐ必要がありません。接続機器が数台にとどまっている。有線でも無線でも用途に足りる速度が出ている。特定の部屋で困っていない。
用途に対して足りているなら、規格が1世代古いというだけで替える理由にはなりません。世代交代のたびに買い替えるより、兆候が2つ揃った時点で動くほうが出費は抑えられます。
よくある質問
Wi-Fiルーターの選び方で寄せられやすい質問を整理します。
Q1:Wi-Fiルーターを買い替えれば速くなりますか?
原因によります。有線でも遅い、マンションの配線方式がVDSL、契約がIPv4のPPPoEのまま。このいずれかなら、買い替えても数字はほとんど変わりません。
効くのは「有線では速いのに無線だけ遅い」「特定の部屋だけ電波が弱い」「台数が増えた時間帯だけ不安定」の3パターン。買う前に有線で測って切り分けてください。
Q2:Wi-Fi 6は必要ですか?
接続台数で決まります。スマホとPCが数台という構成なら、Wi-Fi 5でも困る場面は多くありません。テレビ・ゲーム機・スマートスピーカー・カメラまで含めて10台を超えるなら、Wi-Fi 6以降のOFDMAやMU-MIMOが効いてきます。
なお効率化機能は親機と子機の両方が対応して初めて働きます。手持ちの端末の世代もあわせて確認してください。
Q3:「IPv6対応」と書いてあるルーターならどれでもいいですか?
同じ表記でも中身が2段階あります。IPv6の通信を素通しするだけの「パススルー」と、IPv4サイトもIPv6の通り道で見られるようにする「IPv4 over IPv6」対応は別物です。
さらに IPv4 over IPv6 には MAP-E系(v6プラス等)と DS-Lite系(transix等)があります。契約中のプロバイダが使う方式に対応した製品を選ぶ必要があるわけです。
確認手順は2つ。プロバイダのサポートページで方式名を調べ、その名称が製品の仕様欄にあるかを見てください。
Q4:Wi-Fiルーターの買い替え目安は何年ですか?
年数より兆候で判断するほうが実用的です。目安は7つ。5GHz帯が使えない、LANポートが100Mbps上限、契約のIPv6方式に非対応、週1回以上の再起動が必要、台数が増えて夜だけ不安定、本体が熱い、メーカーのセキュリティ更新が終了。
このうち2つ以上に当てはまるなら検討時期です。特にサポート終了は、速度の不満より優先して扱う価値があります。
Q5:ホームルーターとWi-Fiルーターは何が違いますか?
回線契約が本体に含まれるかどうかが最大の違いです。Wi-Fiルーターは光回線などの契約が別に必要で、有線で来ている回線をWi-Fiに変える機器。ホームルーターは携帯電話の電波を受け取る据え置き型で、回線契約とセットで使います。
工事不要ですぐ使いたいならホームルーター。すでに光回線があって電波の届き方を改善したいならWi-Fiルーター、という切り分けになります。
Q6:二重ルーターかどうかはどう確認しますか?
手元の機器に電話線の差し込み口やランプ表示があるかを見てください。ひかり電話を契約していると、ルーター機能つきのホームゲートウェイが貸与されていることがあります。本体に「ひかり電話」「PPP」のランプがあれば、その機器はすでにルーターとして動作中です。
この状態で市販ルーターをルーターモードでつなぐと二重ルーターになります。ブリッジモード(アクセスポイントモード)に切り替えて使ってください。購入前に切替スイッチの有無を仕様欄で確認しておくと確実です。
Q7:6GHz帯(Wi-Fi 6E/7)は使ったほうがいいですか?
同じ部屋で多台数を使うなら有利です。6GHz帯(5925〜6425MHz)を無線LANに割り当てる総務省令は2022年9月に施行され、Wi-Fi 6E以降で利用できるようになりました(出典: JEITA「5GHz帯および6GHz帯無線LANに関するガイドライン 第二版」2024年3月)。
他の機器と混み合っていないぶん干渉を受けにくい一方、周波数が高いほど障害物に弱くなります。壁を隔てた部屋には届きにくいわけです。
離れた部屋の改善が目的なら、6GHz帯より設置場所やメッシュ構成の検討が先になります。
まとめ
Wi-Fiルーターの選び方は、規格表を比べる前の切り分けで結果が決まります。要点を整理します。
この記事のまとめ
- 買い替えで効くのは「無線だけが遅い」とき。回線・配線方式・契約方式が原因なら変わらない
- 規格の世代で伸びるのは最高速度より同時接続をさばく力。判断軸は台数
- IPv6は契約側とルーター側の方式が一致して初めて効く(MAP-E系/DS-Lite系)
- 選定は畳数表記でなく間取り・同時接続台数・上りの用途の3軸で決める
- 買う前に二重ルーター・有線ポートの上限・設置場所の3点を確認する
- 買い替え目安は年数でなく観測できる兆候。サポート終了は最優先で扱う
順番さえ守れば、余計な出費をせずに済みます。まず有線で測って切り分ける。次に契約の方式を確認する。そのうえで、間取りと台数に合った機種を選ぶ——この3手で、必要な1台がはっきりします。
回線そのものの見直しまで視野に入れるなら、料金や速度を含めた比較を光回線おすすめ比較で整理しています。機器と回線のどちらを動かすべきかは、切り分けの結果しだいです。
※本記事は通信サービス・無線LAN規格の公開情報をもとにした整理です。通信速度や改善効果は機器・住環境・契約条件・時期によって異なります。製品の仕様・対応方式・サポート状況は各メーカーの最新情報を、電波の技術基準は総務省等の公的情報をご確認のうえご判断ください。

